暗殺者チームペッシのスタンド『ビーチ・ボーイ』は暗殺向きで堅実に強い

初登場からしばらくの間、素人の兄ちゃんからすらマンモーニ(ママっ子)と小馬鹿にされるほどのヘタレであったペッシ。
彼はプロシュートの兄貴の死をキッカケに覚醒、ブチャラティが脅威を感じるほどの凄みある暗殺者へと変貌を遂げました。
『黄金の旋風』のテーマの一つが人の『成長』とその『過程』であるならば、ペッシは敵サイドでありながら、間違いなくその体現者の一人です。
今回はペッシの強さについて、彼のスタンド『ビーチ・ボーイ』を主軸としてご紹介します。

ビーチ・ボーイ

ペッシ引用元:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風BS11放送分より抜粋

『ビーチ・ボーイ』は釣竿型のスタンドで、一見まったく戦闘向きにも強そうにも見えません。
しかし、その実この釣竿は恐るべき性能を秘めているのです。
その潜在能力は、仕事に厳しいプロシュートをして『お前のビーチ・ボーイはその気になりゃ何者にも負けねぇ能力じゃあねぇか』と言わしめるほど高いものでした。

ちなみに、ここでいう『強さ』とは単純なタイマン勝負における戦術的有利だけを指すものではなく、任務遂行のための戦略的使い勝手を含むものです。

多機能型の強さ

スタンドとは使い手の精神の具現化であるため、スタンド使いの数だけオリジナルが存在し、似たものはあっても同じものはあり得ません。つまり、存在そのものが『個性』と言えます。
そうした『個性』をあえてザックリと分類する方法はいくつかありますが、その中の一つとして単一機能型と多機能型という分け方があります。

例えば、フーゴの『パープル・ヘイズ』などは単一機能型の最たるもので、発動したが最後敵味方無差別にウィルスで殺し尽くすことしかできません。
それに比べてペッシの『ビーチ・ボーイ』は実に多くの機能を搭載した、すこぶる使い勝手の良い多機能型です。

釣り上げ能力

『ビーチ・ボーイ』はペッシが本物の釣竿を振る要領で針を飛ばすと、壁などの障害物をすり抜けてターゲットにヒットします。
普通の人間には『ビーチ・ボーイ』の針は見えないので、ターゲットがスタンド使いでなければ何度でも投げ直せます。
やり直しが効くというのは兄貴は顔を顰めそうですが、一般的に言えば『強み』でしょう。

『ビーチ・ボーイ』の針が一度身体に刺さると、ターゲットはもはやその部分を切開するか吹き飛ばすかする以外に逃れる術はありません。つまり、ブチャラティの『スティッキィ・フィンガーズ』でもない限り、『ビーチ・ボーイ』の針が刺さったらかなりヤバイ状況に追い込まれます。

ターゲットに針が掛かったら、後は魚を釣り上げるように人やモノを釣り上げキャッチするのみ。
この際にも、壁やドア、床といった障害物を無視して釣り上げ可能です。

『ビーチ・ボーイ』の(視聴者的に)地味に恐ろしい点は、この痛みがリアルに想像できる攻撃にあります。5キロ以上の大型魚を狙うような太く大きな釣り針が人体に突き刺さることを思うと鳥肌ものではないでしょうか?

実体験から言うと、9号のサビキ針が爪の間に軽く刺さっただけで大の大人が涙目になるので、その気になれば『ビーチ・ボーイ』は拷問にも活用できるかと思われます。暗チ内では『メタリカ』が拷問の申し子すぎてお呼びがかかる機会はなさそうですが…。

ちなみに本編では気の毒な運転手さんが真っ先に釣られました。モブと猫に厳しいのがジョジョです。

索敵・探査能力

『ビーチ・ボーイ』は非常に精密な索敵能力を持っています。

針を投げ込んだ先に何人人がいるのか?針がターゲットのどの部位に刺さっているのか?掛けたターゲットの体重はどのくらいか?

まるで釣名人が竿先の微かな動きや、竿を握る手に伝わる繊細な感覚で魚の口に針を合わせるようにして、ペッシは『ビーチ・ボーイ』から伝わる情報の全てを正確に読み解くことができます。

『さっき俺のビーチ・ボーイの針先は、兄貴の右手に食い込んだはず。小指が針の右側にあった。でも今は、小指は針の左側にある、これは左手だ!』

列車の外にぶら下がったプロシュートとブチャラティを同時に引っ掛けた時に見せた、この分析の細かさに視聴者は驚きました。
ペッシは間違いなくカワハギ釣り名人になれます。

殺傷力能力

『ビーチ・ボーイ』はその気になればターゲットを確実かつ目立たずに殺せるスタンドです。ターゲットの身体のどこかに針を刺し、後は血管を辿って心臓までいげば任務完了。

周囲を氷漬けにしたり、謎の突然老衰死をさせたり、唐突に口からカミソリを吐き出させたりもしない、極めてキレイな仕事が可能です。暗殺とは本来目立たずにサクっと殺るものなので、この能力は『強い』でしょう。

ダメージ反射能力

地味に厄介な能力がこれ。
『ビーチ・ボーイ』の攻撃を受けたターゲットの多くは、『針を取り出せないならば取り敢えず糸を切ろう』と考えます。しかし、ここで『ビーチ・ボーイ』の糸を攻撃すると、その衝撃の全てが己に返ってきてしまうのです。

体内に入った針を取り出さなければ、いずれ心臓に到達して死ぬ。身体を切開して取り出そうにも、針の動くスピードの方が早く失血死しかねない。糸を切ろうと攻撃すればダメージが己に返る。

ブチャラティ以外の人間にとって、『ビーチ・ボーイ』の針と糸攻撃は攻略困難かと思われます。何とかできるとしたら、磁力で針と血流を操作出来そうな『メタリカ』、ペッシ本体を圧倒的な力で攻撃できる『パープル・ヘイズ』『グレイトフル・デッド』『グリーン・ディ』、不都合な時間をすっ飛ばせる『キング・クリムゾン』あたりでしょうか。

疑似餌能力

釣の手法の一つに、ルアー釣というものがあります。本物の餌の代わりに、鋭いフックの付いた作り物の小魚を水中で泳いでいるように操作し、魚を食いつかせる方法です。

ペッシの『ビーチ・ボーイ』は、必要に応じて針を『ルアー』に変えることが出来ます。本編では、針を『エアコンのスイッチ』に変化させ、ミスタを見事引っ掛けました。

この直後ミスタに氷をぶっ飛ばされて動揺、自らスタンドを解除してしまい兄貴に体罰込の説教をされる羽目になったのは、『スタンド』ではなくペッシの『心』の弱さが原因です。

パラメーターから分析する『ビーチ・ボーイ』の強さ

一見してわかるように、偏りが少ないオールマイティなスタンドです。

破壊力Cであるため殺傷力が低いように思われがちですが、たかが人間を殺すだけのことに都市ごと壊滅させるゴジラのような破壊力は必要ありません。場合によっては無駄に騒ぎを大きくするだけです。時として人はスズメバチに刺されただけで死ぬ脆弱な生物故、釣り針を心臓にサクリと刺す力があれば事足ります。

パワーと持続力に関しては、成人男性二人を150キロで走る列車の風圧にも負けず支えていたのですから、相当頑丈な竿と糸です。
暴れるマグロ100キロ=風に晒されるブチャラティと兄貴(推定)65キロ×2だとして、竿を保持していたペッシの腕力体力もお見事というより他ありません。おそらくは火事場の馬鹿力で頑張ったのでしょう、兄貴のために。

スピードBはその分野の一流である近距離戦闘型(代表格は三部のスタープラチナ)と真っ向勝負するには心許ないものの、糸の長さ=射程距離』の中距離型であるため、やりようによってはかなり不利を埋められます。

実際、覚醒後のペッシはブチャラティとの戦いにおいて彼と互角に渡り合い、ブチャラティは死を覚悟して自らの身体をバラバラにしたほどです。

ペッシにとって相手がジッパー人間のブチャラティだったのは、不運というより他にありません。ある意味、覚醒後いきなり天敵とカチ合ってしまったようなものです。

勝負に『たられば』はなく、運も実力の内と言ってしまえばそれまでですが、この場合ペッシが運も含めて『弱い』のではなく、ブチャラティが異常に『強運』だったとしか思えません。この勝負に関して言えば、全ての運がブチャラティに味方していました。

使い手に求められる能力

釣りのセンス。
これに尽きます。釣りの経験がないと、『ビーチ・ボーイ』はまず使いこなせないでしょう。というか、釣りが趣味だからこの形のスタンドが発現したと考えるのが自然かもしれません。

そして釣りとは、繊細さと大胆さのバランスを己の掌の中で測る感覚的な遊びなので、ペッシは外見から想像するよりもずっと身体感覚に優れた人間であるかと思われます。

元ネタバンド

ビーチボーイズ引用元:https://www.universal-music.co.jp

1961年に結成された、アメリカのサーフ・ロック・グループ。
ビキニの女の子、改造車、サーフィン…どれもマンモーニには縁がなさそうなテーマを謡っています。

まとめ

ペッシの『ビーチ・ボーイ』はプロシュートが見込んだ通り、初めからポテンシャルの高い『強いはず』のスタンド
そしてペッシ自身が精神的に成長し『心の強さ』を持った時、名実共に『強い』スタンドとなりました。
『ビーチ・ボーイ』の成長性Aとは、スタンドだけでなくペッシ自身をも含めた評価であるように思えます。

最後の最後にペッシは八つ当たりめいた行動を取りブチャラティから『ゲス』呼ばわりされましたが、己の死を悟り残された仲間が少しでも有利になるように振る舞うことは、人としてはともかく暗殺者としてはすこぶる正しいことで恥じる必要はありません。

動機がもはやチームの『栄光』のためでなく、大好きな兄貴を殺された『恨み』だっていいじゃないですか。首の骨を折られてなお『やるだけやろう』とした彼の心意気に敬意を表します。

兄貴のために強くなり、兄貴のためにゲスに堕ちたペッシは、善悪是非を超えて純粋な面を持つ強いスタンド使いでした。